泉ガーデンレジデンス内容の要約

すべてを時価で律するアメリカの投資市場と比べて、投資金額が倍に値上がりすることがない一方で、投資に失敗して元本が半分になることもない点でドイツの不動産投資は保守的といえます。 しかし、それは投資の基本になる部分、すなわち流通性や換金性、投資収益性を犠牲にしているわけではなく、むしろドイツ流のやり方できちんとこなしているのです。
日本流の不動産投資には、ここまで一貫した市場の支えがあったでしょうか。 ドイツもアメリカも、その国なりの特徴を生かした証券化を実践しています。
日本に必要とされるのは、単にどちらかの国の物まねをするのではなく、日本独自の不動産投資市場の哲学を確立することなのです。 外圧に惑わされることなく、ここはじっくりと議論を重ねるべきです。
本来、不動産投資ビジネスこそ金融ビジネスと融合すべき代表的な業種だと私は思っています。 世界には、金融を知っているからこそできる不動産ビジネス、不動産に精通しているからこそ成功する金融ビジネスはいくらでもあります。
にもかかわらず、日本人だけがそれに気づくことなく、お互い見せかけの資産評価額を膨張させることだけで協力しあってきました。 つまり金融機関は金融資産の質よりも量を、不動産業者は収益性より資金調達のための担保価値をそれぞれ膨らませることだけに専念してきたのです。
その結果がいまの不動産、金融業界の開店休業状態を生んだといっていいでしょう。 その意味で、バブル崩壊後の日本は、世界の評価基準を大きく超えて膨張した金融資産と、国民総資産の3分の1を占める不動産が、世界中から失望売りを食らった典型例ともいえるのです。
ところで、日本中がまだ金融ビッグバンヘの期待に胸を膨らませていた97年2月のこと、不動産と金融ビジネスの融合を決裂させるある事件が起こりました。 大蔵省が、銀行が設立する持ち株会社に不動産会社の保有を認めないと決定したのです。
金融ビッグバン構想こそ、日本の不動産ビジネスを根本から見直す絶好の機会になる、あわよくば不動産ビッグバンのきっかけにもなると期待していた私は、この報道を聞いて大きく落胆しました。 持ち株会社こそ、金融ビッグバンの先陣をきって鳴り物入りでスタートした制度のはずが、いきなり不動産と切り離されてしまったのですから。

これでは、不動産と金融ビジネスの融合などできるはずはありません。 大蔵省が銀行持ち株会社に不動産会社の保有を認めない方針を固めたのは、不動産業界からの強い反対があったからです。
おそらく、「地方銀行に不動産会社保有を認めれば、地場の不動産会社は生き残れない」、「大都市でも、資本力、情報力ともに備わった銀行の不動産子会社ができれば、中小業者は生き残れない」といった不動産業界死活論によって相当の政治圧力を与えたのでしょう。 大蔵省が銀行に不動産業を認める方針を発表してから、ほんの一カ月あまりで廃案が決まりました。
日本の不動産業界自身が変化を求めない体質にあることを証明したようなものです。 これでは不動産業界でビッグバンを進めることなどできるはずはありません。
一斉に反対の意志表示をした不動産業界の気持ちも分からないわけではありません。 全国に26万社ある不動産業者にとっては、銀行の不動産業進出は確かに死活問題かもしれません。
しかし、こうやって不動産といえばどんなものでも不動産業者の商売だと認識しているところに、これまた日本流不動産カルチャーの異質さがあるのです。 日本の不動産業者のほとんどは、居住用の不動産の売買や賃貸の斡旋、もしくは一部その開発にまつわる仕事に従事しています。
居住用不動産とは、まさに生活をしていくうえで欠かすことのできない資産ですし、確かにいままでは不動産業の中心でした。 後に詳述しますが、私はこれを生活用資産と呼んでいます。
生活用資産を取り扱うのは、大変立派でかけがえのない仕事だと思います。 しかし、日本がいま直面している最大の問題は、まさにこの生活用資産の価値が暴落する一方で、需要をはるかに上回る慢性の供給過剰状態が続いていることなのです。
さらに、金融機関の不良債権問題をより深刻にしているのは、商業不動産(同じく投資用資産と呼びます)の価値が暴落しながらも良質の不動産の供給は少なく、質の悪いものには一向に買い手がつかないことです。 つまり、同じ不動産がらみの不良債権問題として論じられながら、その中味は生活用と投資用で大きく違っているのです。
不動産業界もこの現実をそろそろ真剣に認識しなければいけません。 私が強調したいのは、この生活用資産の処理をするために銀行に不動産業を認めるのではなく、あくまでも不良債権の担保のまま塩漬けになっている商業不動産の処理に使えるような不動産会社を銀行持ち株会社に持たせることなのです。

地場の不動産業者の皆さんには、いままでどおり生活用資産の斡旋等で汗を流していただければそれでいいのです。 この点を勘違いされると、特殊事情を持った日本の不動産ビッグバンは先には進みません。
銀行は、そのグループ会社も含めれば、まだまだ相当巨額な含み資産を保有しているはずです。 バブル崩壊後の7年間で、銀行は株式の含み益はほぼ出し尽くしたものの、不動産の含み益だけはかなりの余力を残しています。
いざというときには、銀行が持つ優良不動産の含み益によって不良債権を償却することが可能です。 つまり、いまならまだ価値のある保有不動産を吐き出して不良担保不動産を引き取ることができるのです。
既にそれができない銀行も複数ありますが、まだ大方の銀行は大丈夫です。 銀行に最後の資産の入れ替えをさせるのです。
これを実行するためには、銀行持ち株会社に不動産会社を持たせることが不可欠なのです。 今回の不動産業界の猛反対は、ここら辺の事情を一切加味していなかったのではないでしょうか。
不動産と聞いて、生活用資産と投資用資産を混合して考えるのはそろそろ止めにして、各々別々の解決方法を模索するべきです。 不動産は、確かに生活用資産としてかけがえのないものですが、同時に投資用資産としても育てていかなければならないものです。
アメリカでも、大手の一角にランクされるネーションズバンクが、当局の規制をくぐり抜けて不動産業に参入すると伝えられています。 もちろん、日本とはまったく違った目的で参入するのでしょうが、アメリカでも不動産業と金融業の垣根が撤廃される傾向にあることは間違いありません。
肝心なのは、銀行が不動産ビジネスによく精通しているかどうかです。 日本でも、不良債権問題を解消するための特効薬としてもう一度このテーマを議論する時が来るでしょう。

不動産投資に関して日本人が誤解している最大のポイントは、不動産投資は不動産会社のビジネスだと思いこんでいる点です。 さらに、不動産投資はお手軽な資産運用のひとつで、すべて不動産会社に任せておけばうまくいくという誤解もいまだに続いています。
日本では、地主が節税目的で自分の土地にアパートを建てるのも、サラリーマンが節税のために投資用マンションと称される小さなワンルームマンションを買うのも、すべて不動産投資という表現を使います。 実態は不動産を使った節税対策でも、それを節税用不動産と呼ぶことに相当の抵抗があるのでしょう。

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